税金が高すぎる...。サラリーマンでもできる節税 5選

税金対策というと、法人や個人事業主が適用されるイメージがありますが、サラリーマンでも実践可能な対策方法はあるのでしょうか。税金対策の仕組みを理解することで、サラリーマンでも手取り収入を増やせます。

 

本記事では、税金対策の概要を解説したうえで、サラリーマンが実践できる税金対策の種類や注意点を詳しく紹介します。

 

この記事を読み終えるころには、税金対策や仕組みについて理解が深まり、ご自身にとって最適な税金対策を始められるようになります。

 

【本記事の登場人物】FP:岩田さん

相談者:橋本さん

  • 年収700万円
  • 会社員12年目のサラリーマン
  • 夫婦2人暮らし(奥さんはパート)
  • 将来的にはマイホームの購入を検討している
  • 税金対策の中でも、iDeCoに興味を持っている

そもそも「税金対策」とは?

 

岩田
橋本さんは、税金対策として何か取り組んでいることはありますか?
橋本
今は特にしていません。ただ、現在の年収は700万円ほどなので、近い将来税金対策が必要になりそうです。
岩田
そうですね。まずは、橋本さんの1年あたりの税金を計算してみましょう。税金・保険料シミュレーションを使用したところ、所得税が約23万円、住民税が約35万円となりました。あくまで概算ですので、ご了承ください。
橋本
あまり深く考えていませんでしたが、年間60万円弱も負担しているんですね。
岩田
そうなんです。税金対策をしていない場合、多額のお金が給与から引かれてしまうのです。
橋本
サラリーマンでもできる税金対策はあるのでしょうか?
岩田
税金対策のためには、必要経費として認められる資金等を増やして、課税所得を少なくすることが大切です。必要のない税金を払いすぎている状況から抜け出しましょう。

 

サラリーマンもできる税金対策5選

 

続いて、サラリーマンが実践できる税金対策を5つ紹介します。内容は以下の通りです。

 

  • 税金対策①:iDeCo
  • 税金対策②:特定支出控除
  • 税金対策③:生命保険料控除
  • 税金対策④:セルフメディケーション税制
  • 税金対策⑤:住宅ローン控除

 

サラリーマンの方でも、年末調整や確定申告によって控除を受けられます。税金対策の具体的な方法を順番に確認していきましょう。

 

税金対策①:iDeCo

岩田
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となります。毎月一定の金額を積み立てて運用しつつ税金対策を行うため、老後の生活に備えられます。
橋本
iDeCoは以前から興味があったので、リサーチをしていました!掛金の拠出を好きなタイミングで停止したり再開したりできるのは便利ですよね。課税所得が減るうえに、当年分の所得税と翌年分の住民税が軽減されるのも嬉しいポイントです。
岩田
そうですね。ただし、ご自身の口座から掛金を引き落とす方が所得控除の適用を受けるためには、「年末調整」か「確定申告」での手続きが必要です。
また、一度積み立てた資金は、原則60歳まで引き出しできません。無理のない範囲で積み立て・運用する必要があります。iDeCoについては、こちらの記事も読んでみると良いでしょう。
橋本
生活の負担にならないよう注意が必要ですね。

 

税金対策②:特定支出控除

岩田
給与所得の控除額を基準としたとき、半額以上の特定支出があった場合は「特定支出控除」が適用されます。
橋本
特定支出とは、具体的にどんな支出のことなのでしょうか?
岩田
控除の対象となる支出としては、以下のようなパターンが該当します。国税庁のページから引用した内容を確認しましょう。
控除の対象となる支出 支出の詳細
通勤費 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
職務上の旅費 勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出
転居費 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出
研修費 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
資格取得費 職務に直接必要な資格を取得するための支出
※平成25年分以後は、弁護士や公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象とする。
帰宅旅費 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出
勤務必要経費 支出者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの
※平成25年分以後、特定支出の対象となる。
※支出の額の合計額が65万円を超える場合は、65万円までの支出に限る。

 

岩田
なお、勤務必要経費に該当する支出は、以下の3種類があります。

 

図書費:書籍や定期刊行物、その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用

 

衣服費:制服や事務服、作業服などの勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用

 

交際費など:交際費や接待費、その他の費用で給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出

 

橋本
控除の対象となる経費には、さまざまな種類があるんですね!
岩田
そうなんです。ただ、特定支出控除の対象となる経費は高額に設定されているため、適用が難しい懸念点があります。
橋本
たしかにサラリーマンなら会社で負担してくれるケースが多いので、経費を自己負担する場面が少なそうですね。
岩田
具体的な特定支出控除の適用基準額については、下記の表をご覧ください。
給与等の収入金額 適用基準額
400万円 62万円
500万円 72万円
600万円 82万円
700万円 90万円
800万円 95万円

国税庁「給与所得控除額」

 

岩田
年収700万円である橋本さんの場合、1年間に90万円以上の自己負担経費がないと、特定支出控除が適用されません。1年間に90万円ということは、毎月7万5千円の経費支出ですね。
橋本
ひと月に7万円以上の経費を自己負担というケースは、滅多にない気がします。
ただ、私の職場は部署異動によっては転勤が必要となる可能性があります。引っ越しをする際は特定支出控除を適用して、税金対策につなげたいですね。

 

税金対策③:生命保険料控除

岩田
生命保険料控除は、支払った生命保険料から一定の金額を所得から差し引く制度のことです。
橋本
生命保険料控除には数種類の内容があった気がします。制度もいくつかに分類されていて難しく感じました。
岩田
生命保険料控除の具体的な分類と控除限度額について、下記の表で確認していきましょう。
生命保険料控除の対象 詳細 控除対象となる保険の例 旧制度の控除限度額(所得税・住民税) 新制度の控除限度額(所得税・住民税)
一般生命保険料 生存・死亡に対して支払われる保険料 定期保険
終身保険
学資保険
養老保険など
50,000円・35,000円 40,000円・28,000円
個人年金保険料 個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険に関わる保険料 個人年金保険(変額個人年金保険は対象外) 50,000円・35,000円 40,000円・28,000円
介護医療保険料 病気やケガによる入院・通院にともなう給付部分に関わる保険料 医療保険
がん保険
就業不能保険
介護保険など
40,000円・28,000円
合算適用限度額 100,000円・70,000円 120,000円・70,000円

 

橋本
どの制度においても、控除される金額には限度が設定されているんですね。ちなみに「旧制度」と「新制度」について詳しく確認しても良いですか?
岩田
旧制度は2011年12月31日以前に契約した保険、新制度は2012年1月1日以降に契約した保険のことです。どちらの保険に加入しているかによって計算方法や上限額が異なります。
また、控除の対象である保険に加入していたとしても、年間の保険料全額を対象としていない場合もあることに注意しましょう。

 

税金対策④:セルフメディケーション税制

岩田
セルフメディケーション税制とは、平成29年1月1日以降にスイッチOTC医薬品を購入した際、購入費用に対して所得控除を受けられる制度です。
橋本
スイッチOTC医薬品って何ですか?
岩田
カウンター越しに購入する薬、つまり処方箋なしで購入できる市販薬のことです。
世帯での合計金額が1万2千円以上の場合、セルフメディケーション税制を利用できます。
橋本
ドラッグストアで薬を購入した際のレシートや領収書は必須ですね。保管していたので安心しました。
岩田
ただし、セルフメディケーション税制の対象外である医薬品もあります。また、医療費控除(年間10万円以上の医療費を支払った場合に受けられる控除)を受けている方はセルフメディケーション税制と併用できないので注意しましょう。
橋本

 

税金対策⑤:住宅ローン控除

岩田
住宅ローン控除は、2025年までに住宅を新築・入居した際に適用される制度のことです。
橋本
ちょうどマイホームを購入するか悩んでいました。どのくらいの金額が控除されるんでしょうか?
岩田
国税庁によると、年末の住宅ローン残高のうち0.7%が最大13年間控除されます。
橋本
13年間分の税金が還付され続けるとなると、利用しなきゃ損ですね。
岩田
なお、住宅ローン控除は初年度に確定申告、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きを行いましょう。
橋本
手続き方法が異なるんですね!忘れないか心配です。
岩田
万が一、手続きを忘れてしまっても、住宅所得から5年間の申告ができるので安心してください。

 

税金対策を実施する際の注意点

 

橋本
税金対策に対する抵抗がなくなってきました。経費を増やせる仕組みがわかったので、安心して買い物できそうです。
岩田
それは良かったです。ただ、税金対策によって経費を増やそうとする際は、特別必要でないものにお金をかけないようにしましょう。
減らせる税金以上の手元資金を減らしてしまうからです。
橋本
たしかに、税金を少なくするために要らないものを買うのは本末転倒ですね。気をつけます。
岩田
無理な税金対策に走ったり、脱税してしまったりすると、ご自身の経営に悪影響が出てしまいます。
本記事で紹介した各種税金対策のメリット・デメリットを検討したうえで実践するようにしましょう。
税金対策 メリット デメリット
iDeCo ご自身のペースで積み立て・運用ができる 60歳まで引き出しできない
特定支出控除 給与所得の半額以上を占める特定支出を控除できる 控除金額が高く設定されている
保険料控除 税率を掛ける前の所得が低くなる 控除対象外となる保険料もある
セルフメディケーション スイッチOTC医薬品の購入に対して控除を受けられる 医療費控除を受けている場合は併用できない
住宅ローン控除 年末の住宅ローン残高のうち0.7%が最大13年間が控除対象となる 初年度は会社員でも確定申告の必要がある

 

税金対策についてよくある質問

 

岩田
ここからは番外編として、人気が出つつある税金対策の取り組みに関する質問に回答していきます。
橋本
3つほど質問を用意してきました!よろしくお願いします!

 

税金対策としてふるさと納税を始めるのは効果的なのか?

橋本
ふるさと納税には、税金対策の効果があるのでしょうか?
岩田
ふるさと納税とは、自治体を選んで寄附した金額から2,000円超過分を納税する制度です。毎月の税金を先にまとめて払う仕組みになるため、税金対策の効果はありません。
ただ、税金を払って返礼品を受け取れるので、利益がまったくないともいいきれないでしょう。

 

税金対策として不動産投資を始めるのは効果的なのか?

橋本
最近話題になっている不動産投資は、税金対策に繋がりますか?
岩田
不動産投資による税金対策も人気が出てきていますが、誰でも実践できるとは限りません。投資する不動産については、良質な物件を見抜くのが素人にはかなり難しい状況だからです。
儲かる見込みのない物件も多いため、税金対策の前に投資として損してしまう可能性があります。
橋本
買うべきでない物件に手を出し、大きな損失が出るリスクがあるということですね。十分勉強してから投資を始める必要がありそうですね。

 

税金対策を始めるべきサラリーマンの年収はいくら?

橋本
サラリーマンが税金対策を始めるべき年収の目安は、いくらなのでしょうか?
岩田
サラリーマンが税金対策を行う際は、年収300万円程度から考えることをおすすめします。
2020年には税制改正によって、令和2年から給与所得控除が引き下げられています。年収が800万円を超えるサラリーマンが増税対象となっているため、さらに税金対策を意識する必要があるでしょう。
橋本
やはり私も税金対策が必要になりそうですね。一度家計を見直すことから始めてみます。

 

まとめ

 

岩田
税金対策は、単に税金を減らせば良いとはいいきれません。人々からの税金が集まることで、豊かな生活を実現できることを念頭に置いておきましょう。
橋本
正しい知識をつけて税金対策をすることが大切といえますね。
岩田
そうですね。税金対策を実践するには、現時点での支出を見直す必要もあります。家計見直し診断を利用して、ぜひ支出の把握から始めてみましょう。
橋本
本日は、ありがとうございました!
家計見直し診断
TOP