【家電のプロにきく】生活に合わせた掃除機の選び方でQoLをアップ!

マネのば編集部の突撃インタビュー記事第2弾!今回も、東京電力エナジーパートナー株式会社勤務の電気のプロでありながら、多くのメディアでも引っぱりだこの家電のプロでもある、”家電王”こと中村剛さんを訪ねました。

 

今回のテーマは”掃除”。掃除機の進化の背景をはじめ、種類別の選び方ワンポイントアドバイス、そして家電王イチオシの掃除機もご紹介します。生活に合わせた掃除機を選んで、QoL(Quality of Life: 生活の質)をアップし、無駄なく賢い生活習慣を手に入れましょう。

 

生活スタイルの変化が、掃除にも影響?

 

編集部
中村さん、先日は賢く快適な部屋づくりのヒントをいただき、ありがとうございました。本日もよろしくお願いいたします!
中村さん
よろしくお願いします。今日のテーマは”掃除”ですが、皆さんは掃除にどんな印象を持っていますか?
編集部
子どもの頃は週末にお母さんが一日がかりで掃除洗濯をしていたり、年末には家族総出で家じゅうの大掃除をしていた印象が強いですね。最近はそこまで”掃除すること”を意識していないかもしれません。改めて考えてみると、この年末も、大がかりな掃除は特にしなかったような・・?
中村さん
そうですよね。掃除の仕方や頻度など、この数十年で大きく様変わりしました。直近の数年を振り返っても、生活スタイルの変化に合わせて、掃除の習慣や価値観が変わっているんですよ。まずは生活スタイルの変化からお話していきましょう。

 

在宅率アップで、”大掃除”から”こまめに掃除”のスタイルへ

中村さん
2020年の新型コロナウィルス以降、多くの企業で在宅勤務やリモートワークが採用されたことで、在宅率がアップしました。当然の結果として、自宅が汚れやすくなりますよね。
編集部
私はリモートワークを行っているのですが、仕事部屋はもちろん、リビングやキッチンも汚れやすくなったと実感しています。日中にリビングで過ごしたり、家で食事をする頻度が増えたからですよね。さらに、これまで気にならなかった場所のホコリが目につくようにもなりました・・。
中村さん
先ほどもお話にでたように、以前は週1~2回程度、まとまった時間に掃除機をかけていたのに対して、最近は目に付いた箇所をこまめに掃除するスタイルに変わってきました。家にいる時間が長い分、過ごす場所は快適にしたいですからね。いつも綺麗なら、年末にわざわざ家全部を念入りに大掃除する必要もないですしね。

 

マンション住まいが増えたことで、掃除機もリビングで”見せる”スタイルへ

 

中村さん
少しデータを用いたお話をしましょう。長期視点でみると、年々核家族化が進み単身・夫婦住まいが増えたことで、戸建中心からマンション住まいへと多様化したことも、生活スタイルの変化の一因とされています。
中村さん
セキスイハイムによると、直近の10年でマンション化率(世帯数に占める分譲マンション戸数の割合)は微増を続けており、今では12.5%と、7.8世帯に1世帯がマンション住まいと言われる時代。東京だけをみると、その数値は27.72%(2020年)にものぼります。
編集部
あまり意識していなかったですが、二世帯・三世帯で住んでいる知人はそこまで多くないかも・・。私が小さい頃は、祖父母と一緒に住んでいたことを考えると、違いを感じます。
編集部
最近子どもが生まれた友人たちも、祖父母とは別に暮らしている場合がほとんどですね。しかも、戸建よりマンション住まいをしている人が結構多い気がします。
中村さん
こうした家族形態や住まいの変化を経て、一昔前は納戸にしまっておくものだった掃除機ですが、スペース削減の観点からもリビングなどに置くスタイルが定着しています。

 

家電のプロと、掃除機の進化を探る!

 

中村さん
こうした生活スタイルの変化に合わせて、掃除機も日々進化しているんですよ。
編集部
近頃は家電量販店に行くと、様々な掃除機を目にするようになりました。ルンバやDysonのように話題性のある商品に目がとまりますが、商品名だけ知っていても、性能の違いや何が自分に合っているのかはよくわからなくて・・。結局、販売スタッフさんにおすすめされたものを買ってしまいます。
中村さん
まずはそれぞれの機器の違いとメリット・デメリットを知っておく必要がありそうですね。

 

掃除機の種類別と主な特徴

中村さん
こちらが、主な掃除機の種類や特徴です。1つずつ説明していきましょう。
概要 メリット デメリット
キャニスター式
(シリンダー式)
本体とホースがくっついているタイプ
コードありが主流
長時間稼働可能
本体の重さが気にならない
ゴミ処理頻度が低い
小回りが利きにくい
移動させにくい
スティック式 本体・ホースの一体化タイプ
コードレスが主流
小回りが利きやすい
静音
体感重量が重たい
ゴミ処理頻度が高い
ロボット式 床置き・自動運転タイプ
コードレス
不在時に掃除可能
省エネ
乾拭き・水拭きが一度にできるものも
音が大きい
本体価格が高い

 

キャニスター式からスティック式へ・・掃除機の進化の過程とは

中村さん
子どもの頃にご家庭や学校で使っていたのは、コードを繋いで使う掃除機だったのではないでしょうか。ゴミがたまると、本体の中に入っている紙パックを交換していませんでしたか。ああいうタイプの掃除機は「キャニスター式」と呼ばれます(正式名称は「シリンダー式」と言いますが、本記事では一般的に馴染みの高い「キャニスター式」と表記します)。一方で、最近よく目にする、コードレスでボディのスッキリしたタイプの掃除機は「スティック式」と言います。
中村さん
キャニスター式は本体とホースがくっついているタイプで、基本的にはコードがあります。本体部分を床に置いて使うので、利用するときに重さが気にならない点や、ゴミを紙パックの中にためられる点、バッテリーを気にする必要がない点がメリットです。部屋数が多い自宅の場合は、一気に掃除を済ませることができますね。一方で、小回りの利きにくさをはじめ、コンセントの移動など、操作性へのストレスが大きいのが主な難点です。
編集部
・・・よくコードを引っ張りすぎて、コンセントが抜けていたのを思い出します(笑)!
中村さん
そんなキャニスター式の小回りの利きにくさもあり、スティック式が登場しました。ただし、当初はあくまでも”セカンド掃除機”という位置づけで、キャニスター式で届かない部分、小回りが利かない部分のみスティック式のクリーナーを使用していました。
中村さん
一方で、発売当初のスティック式は、本体と持ち手が一体型なので使用時の重たさが気になり、バッテリーもすぐに切れてしまう、吸引力も弱い、という難点がありました。いわゆる”安かろう悪かろう”の製品が多かったわけです。
編集部
たしかに、キャニスター式に慣れていた分、スティック式を使い始めた当初は吸い込みが良くないなと思った覚えがあります。

 

編集部
・・今の話を聞いて思い出したことがあります。少し脇道にそれてしまいますが、昔は布団圧縮袋の空気を抜くのによくキャニスター式の掃除機を使っていましたよね。スティック式の掃除機に変えた途端、うまく空気が抜けなくなって困っているんです。
中村さん
良い着眼点ですね。まさに、キャニスター式は吸引力がものすごいんです。一方で、スティック式は強く吸引するとバッテリーを消耗するので、控えざるを得ません。しかし、ブラシの形状や回転を適切にコントロールする等で集塵力を高めているので、逆に言うと吸引力は抑えることができるようになりました。
編集部
だから最近の掃除機は吸引力があまり高くなくてもよいのですね。
中村さん
吸引力を弱めても集塵できるようになりましたので、静音かつエネルギー効率も高くなりました。省エネになったということですね。その分、布団袋を圧縮するにはパワー不足になってしまいましたが・・(笑)
編集部
省エネはもちろんですが、ブラシの形状が進化したというのも嬉しいポイントですね。掃除してもうまく吸引できなかったり、掃除機をかけようとしたらブラシについたゴミがカーペットに付着して逆効果になったりと、悩みが多かった気がします・・。
中村さん
これまではどうしても髪の毛やペットの毛が絡まる問題がありましたよね。ブラシ部分が毛束でできている場合は、そこに絡まってしまうと、ハサミで切る以外解決策がなかったのですが、最近ではゴムタイプが登場するなど、素材も形状もメーカーによってかなり進化してきました。ゴム製のブラシは、床に接着して真空状態にすることでゴミを吸引するしくみなので、毛がらみの問題が解消されました。メンテナンスも半年に1度くらいで十分、手入れが簡単かと思います。
中村さん
スティック式の特徴に話を戻しますが、バッテリーの持ち時間に関しても、近年のスマホやEVといった他機器の研究と合わせてリチウムバッテリーやモーターの進化が進んだ結果、大幅に改善されました。現在ではスティック式はサブ掃除機ではなく、自宅で使用する掃除機の主流になっていますよね。”安かろう悪かろう”を脱却し、性能が良くなったことに加え、ダイソンなど高価格帯の製品が人気を博すようになった流れを受け、現在では幅広い価格帯の製品が並ぶようになりました。
編集部
スティック式も、主要製品に至るまでの過程があったのですね。
中村さん
そうですね。更に最近では、機能面の進化ではなく、リビングに置いておく人が増えた分、見た目にもオシャレで生活感のあまりない掃除機も出ていますよ。
編集部
見せ掃除機!掃除機までインテリアの一部になってきたのですね。

 

ロボット掃除機も日々進化!

中村さん
最後に、”ルンバ”をはじめとしたロボット式。ロボット式は、機器がコンパクトな点や自動運転ができる点はもちろん分かりやすいメリットと言えますが、実は1番省エネの掃除機でもあります。
編集部
え!それは意外です。なぜでしょうか?
中村さん
いわゆる位置エネルギーの関係です。床と機器の距離が近いので、ゴミを高く吸い上げる必要がないんですね。そのため、使用するエネルギーも少なくて済みます。ランニングコストが抑えられ、家計にも優しいですね。
編集部
ロボット掃除機と言えば、今では水拭きタイプもありますよね。
中村さん
水拭きタイプは、日本ならではの雑巾がけの文化もあいまって人気が出ていますね。有名なのはiRobotの「ブラーバ」というモデルでしょうか。
編集部
ロボット掃除機を買おうかと思っているのですが、乾拭きタイプと水拭きタイプ、どちらにするか迷っています。ハイブリット型もありますが、実際のところ性能はどうですか?
中村さん
発売当初は、正直なことを言うと実はハイブリッド型はあまりおススメしていませんでした。メンテナンスをきちんとしないとカビになりやすかったり、カーペットなど濡らしてはいけない箇所を掃除機側で判別する能力がさほど高くなかったためです。しかし現在のハイブリッド型はだいぶ進化していますよ。床の状況を読み取ってモップを床面から持ち上げる機能があったり、水量調節機能もついています。カーペットや家具が濡れる心配がないので、安心して使用できますね。

 

生活スタイル別のおススメ掃除機

 

編集部
種類別の特徴、とても参考になりました。それぞれメリットがありますし、実際に自分にはどれが合っているのかも気になります。
中村さん
マネのば読者の皆さんは、初めて掃除機を選ぶ人も多いのではないでしょうか。生活スタイル別に、おススメ掃除機のタイプと製品をご紹介します。それぞれのご事情によっても変わってきますが、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

リモートワークの多いご家庭にはスティック式がおススメ!

編集部
私は一人暮らしで、リモートワークが多いのですが、何を買ったら良いでしょうか・・?
中村さん
最近増えている”リモートワーク”に当てはまる方には、スティック式がおススメです。やはり、気になるときにパッと使える利便性が1番です。ロボット式は音が大きいので、在宅率が高いと気になってしまうかもしれません。一人暮らしの場合はマンション住まいの方が多いと思いますので、見た目にもこだわりたいところですね。私が最近おススメしているスティック式掃除機は、Sharkの「EVOPOWER」というシリーズです。

 

編集部
Sharkというメーカー、お恥ずかしながら、初めて名前を聞きました。
中村さん
アメリカ・ボストンの会社なんですよ。EVOPOWERの中にも何種類か製品があるのですが、その中でも「EVOPOWER SYSTEM iQ+」が特におススメです。理由はいくつかありますが、まずは自動ゴミ収集ドックがついている点。そのため、スティック掃除機にありがちな”すぐゴミがたまる問題”が解消されています。1日に1回掃除機をかけたとしても、1か月間はゴミ捨てしなくて問題ありません。
編集部
それはありがたいですね!ゴミ捨ての時にほこりが舞うのが、小さいことながら結構ストレスだったりします。
中村さん
充電器と一体型のドックにゴミをためていきますから、その分掃除機のスティック自体はスリムですよね。見た目にもスマートですし、その分軽量になります。
中村さん
さらに、この製品はスティック部分が曲がるので、細かな部分までヘッドが届く点や、ダブルバッテリー搭載なので充電切れの心配がない点、ヘッド部分が通常のブラシタイプに比べて毛がらみしない等、良いところだらけです。見た目にもスタイリッシュなので、リビングに置いておいても不快感のないデザインです。スティック式としては決して安い価格ではないのですが、買い替えを考えている場合は店頭でチェックしてみてくださいね。
編集部
こういった自動ゴミ収集機能がついた製品というのは珍しいのでしょうか?
中村さん
他には、パナソニックの「MC-NS10K」という製品もあります。製品化されているのはまだこの2種類だけですね。

 

家を空けることの多いご家庭、お子さんやペットがいるご家庭にはロボット掃除機がおススメ!

編集部
我が家は子どもが生まれて1年くらい経ちまして、最近は夫婦とも出社する事も増えてきました。
中村さん
家を空けることが多い場合は、ロボット掃除機がおススメです。音が大きいので在宅ワークの環境向きではないのですが、吸引力も高く、不在時に使える場合には家事の時間短縮に繋がります。
中村さん
特に小さなお子さんがいらっしゃるとなると、床の清潔感を重要視したいのではないでしょうか。これから購入するのであれば、水拭きもできるタイプがおススメです。少々お値段は張りますが、長い目で見て買うとすると、iRobotの「ルンバ コンボ j7+」というタイプがおススメです。

 

編集部
先ほどお話に出ていたハイブリッド型ですね。
中村さん
先ほどもお話したように、床の状況を読み取って乾拭き・水拭きを選別してくれますし、部屋別に「乾拭き&水拭き」「乾拭きのみ」といった選択もできます。自動ゴミ収集機を使えば、最大1年間はゴミ捨ても不要なので、まさに掃除に関するストレスが減りますね。
編集部
子育てと仕事の両立で、家の中を気に掛ける余裕が作れていないので、とても助かります。
中村さん
ロボット掃除機の進化は著しくて、床に洗濯物などの障害物があればきちんとよけて掃除してくれますから、床を綺麗にしておかないと!と悩まなくても大丈夫ですよ。もちろん、綺麗な状態で掃除出来れば最も効果的ではあるので、ロボット掃除機を購入すると、自然と床に物を置かなくなるといったメリットもあるかもしれませんね(笑)。

 

まとめ:暮らしに合わせた掃除機を選んで、QoLをアップ!

編集部
家電量販店に行くと、つい値段や見た目にこだわってしまいがちですが、生活スタイルに合わせて機能を踏まえた掃除機選びを行うことが大切だと感じました。
中村さん
掃除は日常生活から切っても切り離せないですから、きちんと知識をつけて自分にあった掃除機選びができるようになると、結果的にQoLアップにもつながりますし、無駄なく賢い生活が送れるようになりますよね。
編集部
日常生活の中にも、”お金”につながるヒントが隠されているんですね。中村さん、ありがとうございました!

 

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東京電力エナジーパートナー(株)中村剛

2002年に『TVチャンピオン』のスーパー家電通選手権で優勝し、体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営にあたる。現在は家電王として動画『くらしのラボ』をFacebookとYouTubeで毎週配信している他、テレビ、雑誌、新聞、WEBなどのさまざまなメディアで暮らしに役立つ家電情報を発信中。
https://www.youtube.com/channel/UCGSXwlnTWgcf6wHoekOlq-Q

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