奨学金の繰り上げ返済と投資、家計に余裕が生まれたらどっちを優先すべき?

大きな収入を得た時、あなたはどのように使いますか?ちょっと贅沢したり、堅実に貯金にまわしたりなどと考える方も多いでしょう。

せっかく得られたお金ですから、有効に使いたいものですよね。

 

まとまったお金は「借入金の返済」か「投資」に充てるのがおすすめです。

 

日本では、2人に1人が奨学金を借りています。

 

奨学金を繰り上げ返済すると利息を払わずに済みますし、投資に回せば収益を得られます。

 

守りの奨学金返済と攻めの投資なら、どちらの方がお得なのでしょうか。この記事では、まとまったお金の使い方、特に「奨学金の繰り上げ返済と資産運用って、どっちがいいの?」と悩む方へ、どちらを選ぶとよいのか、またその理由について解説します。

 

奨学金の繰り上げ返済 判断のポイントは「金利」

 

 

 

「奨学金の繰り上げ返済」と「資産運用」で迷ったなら「金利」で決めるのがポイントです。

 

投資には「利回り」があり、利回りが多いほど収益も多くなります。一方、奨学金には繰り上げ返済をすると、支払利息を削減できるという特徴があります。返済の金利と投資の利回りを見比べ、どちらがお得か見極めてみましょう。

 

奨学金にはさまざまな種類があり、金利や制度がそれぞれ異なりますが、借りた奨学金の種類や詳細について、把握していない方も多いでしょう。

 

ここでは奨学金の平均金利と利息支払い額の一例について解説します。

 

奨学金の種類と金利

奨学金には、以下のように2種類あります。

 

給付型 返済の必要がない
貸与型 第一種 無利子(借りた額だけ返す)
第二種 有利子(借りた額に上乗せして返す)

 

給付型の奨学金は、借りても返済の必要がありません。返済の必要があるのは貸与型の場合です。貸与型の奨学金を借りた時は、卒業後に返さなくてはなりません。

 

さらに、貸与型の奨学金にも2種類あります。無利子で借りられるのが第一種、利子がついてしまうのが第二種です。

 

第二種の奨学金を借りているなら、借りた額だけでなく、借りた額に数パーセント上乗せして支払わなくてはなりません。

 

第二種の利率には2つの方式があります。

 

利率固定方式 利率が変わらない
利率見直し方式 5年ごとに利率を見直す

 

利率固定方式では、奨学金を借りた時の利率がずっと適用されます。一方、利率見直し方式では、5年ごとに利率を見直します。市場金利に合わせて利率が変わるのです。

 

そのため、将来市場金利が上がりそうなら「利率固定方式」、下がりそうなら「利率見直し方式」を選ぶとよいでしょう。

 

 

また、金利の上限は3%と決まっており、現在の利率は0.020%〜0.668%です。(令和4年度4月時点)

 

それでは「利率見直し方式」を選んだ場合の具体例を見てみましょう。

 

奨学金の平均利息

 

利率見直し方式を選択している方は、どのくらいの利息を支払うのか把握したいですよね。利率固定方式とどっちがお得なのでしょうか。

 

奨学金の平均借入額は300万円です。例として、300万円を借り入れたときの支払い月額を見てみましょう。

 

金利率 支払月額(※元本残高より低減)
1% 2,500円
0.20%(平成25年度・利率見直し方式) 500円

 

このように、金利が1%以下であれば月額2,500円もかかりません。

1%ですと年間3万円の利息を支払いますが、近年の利率は1%以下が続いています。

 

では、繰り上げ返済を使うとどのくらい利息が軽減されるのでしょうか。300万円の借入金をそのまま返済した場合と、繰り上げ返済を使った場合の利息額を比較してみましょう。

 

そのまま支払う場合 約270,000円
毎月5万円を繰り上げ返済した場合 約70,000円
軽減利息額 約200,000円

 

このように、毎月5万円の繰り上げ返済でトータル約20万円の利息を軽減できると分かります。

 

20万円は大きい額に見えますよね。しかし、後ほど説明する「資産運用」と比較をすると、20万円という金額の削減効果はさして大きいものではないと分かります。

 

投資を開始した場合の平均利回りと資産推移

 

奨学金返済に向けた具体的なイメージが持てたと思います。では、まとまったお金で投資をした場合はどうでしょうか。

 

投資信託の平均利回りは3%~10%程度と言われています。以下は、つみたてNISAで投資信託を利用し、元手300万円を毎月積み立て、5%で運用をした場合のシミュレーション表です。

 

利回り 年数 毎月積立額 運用益
(※毎月額はトータルリターンを月割して計算)
5% 5年 5万円 40万円(毎月6,666円)
5% 15年 約1万6,000円 139万円(毎月7,722円)
5% 30年 約8,300円 392万円(毎月1万888円)

 

このように、5年間かけて積み立て投資を行うと、毎月約6,000円分の収益が出る計算になります。また投資信託は複利で運用されるため、長い時間をかけるほど収益が大きくなります。

 

奨学金の利率は1%で毎月2,500円ですから、投資信託を利用すると奨学金を支払い続けても3,500円分お得です。

奨学金(1%)と比較すると、投資信託の収益は大きく差をつけるのが分かります。

 

つみたてNISAに対応している投資信託には楽天VTIやslimS&P500などがあります。

 

参考までに、つみたてNISAに対応している投資信託を2種紹介します。

 

 

信託名 年利回り(2021年~2022年) 特徴
投資信託A 7.1% 米国株式市場の約4,000銘柄に分散投資。
3年間の運用で利率20%も。
投資信託B 23.4% 米国500銘柄で構成されるS&P500指数を元に運用。信託報酬率が低い(0.0968%以内)
2021年は利回りが高水準だが、2019年度は10.4%と平均値並みの利回り。

 

投資信託の運用結果を見ると、年利回りは高水準です。

奨学金の利息1%と比較すると大きく差があるのが分かります。

 

奨学金返済と投資のメリット・デメリット

 

奨学金の繰り上げ返済と、投資運用。それぞれの特徴が掴めました。一見すると投資運用に軍配が上がりそうですが、投資運用にデメリットはないのでしょうか。

 

お金の使い道は慎重に考えたいものですよね。ここでは、奨学金の繰り上げ返済と投資運用のメリット・デメリットについて押さえておきましょう。

 

奨学金の繰り上げ返済におけるメリット・デメリット

奨学金の繰り上げ返済のメリットは以下の通りです。

 

  • 早く返済するほど、支払利息を払わなくて済む
  • 「借金を抱えている」といった精神的負担をなくせる

 

投資と比べるとうまみが少ない繰り上げ返済ですが、繰り上げた分は確実に利息を払わなくて済みます。

 

一方で、このようなデメリットがあります。

 

  • いざという時の貯金が目減りしてしまう
  • 今後、インフレでお金の価値が下がっていく可能性がある
  • 投資運用収益の方が高い金額を手にできる

 

仮に日本がインフレになった場合、繰り上げ返済はもったいない選択かもしれません。

インフレが起きると給料の額面が増えますが、代わりに1円の価値が下がります。

そのため、例え300万円の奨学金を借りていても、将来は現在の250万円分の価値に目減りし、返済しやすくなる可能性があるのです。

 

また、手元にお金を持っていないと不測の事態に対処できません。

そのため、奨学金を返済しても金銭的余裕があるか、確認することが大切です。

 

投資によるメリット・デメリット

一方、投資によるメリットは以下の3つがあると考えられます。

 

  • 株式投資の場合、株主優待が得られる
  • 配当金が手に入る
  • 投資信託、REIT(リート、不動産分散投資)なら低リスクで安定した収益を得られやすい

 

株式投資を行った場合、株主優待を手にできます。優待の内容はQUOカード等のギフトカード、企業の商品や利用券などさまざまです。

 

また、持株の数に応じて配当金を得られることもあります。投資信託やREITなど、分散投資なら比較的リスクが低いでしょう。

 

投資によるデメリットは以下の通りです。

 

  • 利回りは確実ではない
  • 株式投資は振れ幅が広く、影響を受けやすい
  • 投資信託の場合、手数料や運用管理費などがかかる

 

投資信託は「投資の外注」ともいえるため、運用費がかかります。

 

また投資は企業の業績や情勢、景気に大きく左右されます。そのため、利回りは確実なものではありません。

 

しかし、一般的に経済は成長に向かうため、長期保有であればあるほど期待値が高いと言われています。

 

投資にリスクはありますが、投資信託などをうまく使いながら運用していくとよいでしょう。

 

まとめ

まとまったお金がある場合、奨学金を繰り上げ返済すると、将来払う分の利息を減らせます。一方で、投資を行えば奨学金の利率以上の運用益が見込まれます。

 

投資にはリスクがありますが、投資信託のような分散投資なら低リスクで運用ができるため、まとまったお金がある場合は、投資に回してみてはいかがでしょうか。

 

投資をはじめてみたいけど難しそう、よくわからない・・という方は、是非こちらの記事もあわせてご覧ください。

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