2024年から始まる新NISA、どう使いこなす?大きな制度の改正を前に、現役FPが具体的な活用法を解説!

今までとは全く異なる制度に大きく改正されるNISA。今つみたてNISAや通常のNISAを活用されている方も、そうでない方も、2024年から始まる新NISAをどう活用すべきか悩まれているのではないでしょうか。

 

2022年10月に「なぜ今、NISA法改正に至ったのか?岸田政権の狙いとは」という記事をリリースし、行われる予定であったNISA改正について解説してきましたが、2022年の12月に状況は一変。長く金融業界に身を置くFPもびっくり仰天なNISA大改正へと大きく舵が切られたのです。

 

この記事では、制度概要を簡単に解説した後に、具体的にどうこの制度を活用していくと良いのかをFP目線で噛み砕いてお伝えしていきます。

 

新NISAの内容は政府発表内容自体が変わっていますので注意しましょう!

 

2024年から始まる新しいNISAとは?

新しいNISA:金融庁より引用

 

まずは新しく始まる制度のおさらいをしましょう。令和5年度税制改正大綱において発表された内容を基に簡単に解説していきます。今回の大改正のテーマは「抜本的拡充」と「恒久化」です。

 

新しいNISAが掲げる「抜本的拡充」とは?

今までのNISAは、毎年、投資の原資としては120万円/年までが限度でした。つみたてNISAは40万円/年でした。そして、このふたつの制度は併用が不可能でした。

 

表:金融庁ウェブサイト『NISAとは?』を基に自作

 

ところが、新しい制度では、一般NISAが「成長投資枠」という名称になり、倍額の240万円/年まで投資可能に、つみたてNISAは「つみたて投資枠」という名称に変わり(名称は2023年2月時点で仮称のようです)、なんと3倍の120万円/年に拡充される見込みなのです。

 

しかもこちらの「成長投資枠」と「つみたて投資枠」は併用が可能となっており、240万円+120万円の最大360万円も年間で非課税投資できるように変わります。つみたてNISAを年40万円投資していた方からすると、枠が9倍になることになりますね。

 

いきなり枠が9倍になりましたよ、と言われても頭が混乱しますよね…

 

表:金融庁ウェブサイト『新しいNISA』を基に自作

 

ただ、もちろんずっと360万円を毎年非課税で投資し続けることはできず、上限額が決まっています。成長投資枠とつみたて投資枠は合わせて1,800万円まで。成長投資枠単体としては1,200万円まで。つみたて投資枠は、成長投資枠を使っていない場合単体で1,800万円上限まで投資可能となる予定です。

 

表:金融庁ウェブサイト『新しいNISA』を基に自作

 

こちらの投資上限も、NISAは120万円×5年の600万円が上限だったところ1,200万円と倍になったわけですし、つみたて投資枠も、40万円×20年の800万円上限から1,800万円と(成長投資枠を使用しない前提)、2倍以上の枠になっています。この大幅な枠の拡大こそが金融庁の言う「抜本的拡充」ということです。

 

まさに岸田政権発信の、資産所得倍増プランの具現化ですね!

 

もうひとつのキーワード「恒久化」とは?

もともとNISAには期限がありました。NISAやジュニアNISAは2023年末まで、つみたてNISAは2037年改め2042年までの期限である予定でした(2024年の新NISA以降で、2023年に終了予定)。これが新しいNISA制度は、無期限になる見込みなのです。いつでも始められて、いつまでも保有していられる、という大変使い勝手の良い、分かりやすい制度になる見込み、ということです。

 

投資は短期間で結果を出そうとせず、ゆっくり時間をかけて、長期で成果を取りにいくべき、という基本的なセオリーに合った形となるようで、非常に喜ばしいことです。

 

新しいNISAをどう活用する?

投資枠の拡大や恒久化は大変喜ばしいことですが、拡充幅が大きくなりすぎて、使いこなすのが少し大変になる印象を筆者は持っています。そこで「枠を使い切ることばかりを意識しない」ということと、「大原則はドルコスト平均法」という2点のポイントから上手く活用するためのコツを伝授したいと思います。

 

枠を使い切ることばかりを意識しないこと

投資金額はゆとりを持った計画にしましょう。特につみたてNISAは、40万円/年の非課税枠を完全に使い切る、33,333円×12か月、といったような設定をされている方が多く見られましたが、今後つみたて投資枠が始まったら、上限いっぱいの10万円/月投資すべきなのか、というのは「ちょっと待った」です。

 

家計における貯蓄には、すぐに銀行から引き出せて元本割れのない「流動性資金」、数年後に支払う予定の教育費など、少しは増えていないと困るが絶対に減っていてはならない「安全性資金」、15~20年以上先にしか使わない予定の老後資金など大きく増やす目的の「収益性資金」という3つの分野に分けた貯蓄をすべきなのです。

 

平たく言うと、目的別に貯蓄をしましょう、ということです!

 

資産配分のグラフ:自作

 

よくインターネット記事や、SNS、動画サイトなどで、「オールカントリー」や「S&P500」にどんどん投資しておけばOKといった意見が多く聞こえてきます。間違っているとは思いませんが、これはあくまで3つのお金の分野の「収益性資金」に当てはまるので、流動性や確実性という、他の方法での貯蓄も必ず並行してするようにしましょう。

 

枠が大きくなるからと言って、「オールカントリー」や「S&P500」のように価格変動リスクの大きい方法ばかりで投資していくのは家計収支全体から見てバランスが良くありません。

 

SNSで発信されている内容だけで判断しないように気をつけましょう!

 

価格変動リスクのイメージ図:自作

 

大原則はドルコスト平均法ということを忘れずに

毎月一定額をずっと投資し続けるという「ドルコスト平均法」に基づいた投資こそが、プロ投資家でなくても結果が出せる可能性が高い投資法です。ドルコスト平均法について詳しくは金融庁のホームページか、難しければマネのばに掲載されている投資の基礎の記事をご確認ください。

 

投資にお金をまわしすぎて、現金貯蓄が途中で尽き、値下がりしているタイミングなのにどうしても投資した「収益性資産」を取り崩さないといけないという事態だけは避けなければならないと考えます。投資可能枠が大きく広がったからこそ、そういった事態に陥る方が増えるのではないかと懸念しています。

 

途中で安易に投資金額の設定や商品を変える、という行為も極力してほしくありません。よって、プロ投資家(24時間体制で相場を監視できる方)の方以外は、地味ではありますが、これだ!と決めた手数料の低いインデックスファンド2,3種類を、ずっと10年、20年と変わらない一定金額ずつ買い続ける、という使い方をしてほしいのです。

 

相場に関係なく、ずっと一定額を買い続けるには、少しメンタルの強さが必要です!

 

新しいNISAを使いこなすために、まずは家計を見直そう

新しいNISAは制度が大きく拡充されますが、毎月の投資金額をどう設定すべきか、商品は何を選ぶべきか、といった点は、今まで以上に読者の皆さんにとって大きく頭を悩ませるポイントになるだろうと考えています。2024年の新NISAが始まる前の今こそ、家計を見直し、ライフプランを立てて、超長期NISA投資計画を事前に立てておきましょう。マネのばは、家計見直しを支援する無料の診断ツール「家計見直し診断」も運営しています。

 

オンライン完結型の家計見直しサービス「TAMARU」認定ファイナンシャル・プランナー 森 祐司(FP歴8年)

不動産デベロッパー会社で収益不動産運用のコンサルティング、生命保険会社でのライフプランナーを経て、特定の分野に偏らない独立系FP事務所に移籍。
800世帯超のライフプランニングを行ってきた実績があり、20年30年以上先まで見据えた長期人生設計を得意分野とする。
https://tamaru-kakei.com/fp_list
資格
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券外務員1種
貸金業取扱主任者

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