全ての国民には国民年金の加入が義務づけられていますが、会社員は厚生年金の加入義務があります。そもそも厚生年金とは、対象の事業所に所属する会社員が加入する年金制度のことです。
現在は老後2,000万円問題などの不安もあり、年金に関する関心が高まっています。そこで、この記事では会社員の加入義務とされる「厚生年金」について、制度の具体的な内容や支給額を解説します。
制度のポイントについても解説するので、仕組みを正しく理解し、納得して保険料を支払うことができるよう、ぜひ最後までご覧ください。
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厚生年金ってどんな制度?
厚生年金は法人として営業している事業所が適用となり、全従業員が加入する制度を指します。受給資格と対象者は以下の通りです。
受給資格 | 年金加入期間が10年以上の方 |
---|---|
加入対象者 | 厚生年金保険に加入している会社、工場、商店、船舶などの適用事業所に常時使用される70歳未満の方 |
厚生年金を受け取るには、加入対象者となったうえで受給資格を満たしている必要があります。保険料は給料から天引きされているので、支払いを従業員が行うことはありません。
ただし、制度の仕組みとして従業員と事業所が保険料を折半している点は把握しておきましょう。
厚生年金の支給額はどう決まる?
厚生年金の支給額は加入期間と、そのあいだの報酬額で決まります。厚生年金の保険料は報酬の18.3%にあたる金額を事業所と折半して支払う仕組みです。加入期間が長く、給料が高い人ほど支払総額が増えると覚えましょう。
ただし注意点として、厚生年金の支給額は厚生労働省が決めており、一定ではありません。支給額の引き下げが決定されてしまうと、予想より少ない金額しか受け取れない可能性もあります。
参考ですが「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の平均支給額は月額14万6,145円となっています。この金額は一人あたりとなっており、ともに正社員だった夫婦二人暮らしであれば30万円近くになるので、生活費をある程度賄える金額といえるでしょう。
パートや専業主婦(夫)の場合も、条件によって厚生年金に加入できます。具体的な金額について気になる方は「厚生労働省の特設サイト」を確認してみるとよいでしょう。
厚生年金の支給額をシミュレーション
厚生年金支給額は「厚生年金の受給額=報酬比例部分の年金額+経過的加算+加給年金額」の計算式で決定されます。
経過的加算とは65歳以降の人が年齢に応じて、厚生年金に加算される部分です。加給年金額は生計を同じくする配偶者と子どもがいる場合に加算される金額を指します。
計算式からは支給額のイメージがわきにくいかもしれません。以下は、現在30歳の人を想定したシミュレーションです。ぜひ参考にしてみてください。
現役時の平均年収/加入期間 | 10年 | 20年 | 30年 |
---|---|---|---|
300万円 | 8万円 | 10.2万円 | 12.6万円 |
400万円 | 8.5万円 | 11.4万円 | 14.7万円 |
500万円 | 9万円 | 12.7万円 | 15.2万円 |
上記の金額は現時点でのシミュレーションであり、配偶者の有無などによっても金額は変わるかもしれません。しかし、加入期間が長く収入が多い人ほど支給額も増える点は共通しているので、押さえておきましょう。
厚生年金の支給額で重要な3つのポイント
厚生年金の支給額を考えるうえで重要なポイントは以下の3つです。
- 繰り下げ受給で最大84%増の金額を受け取れる
- 遺族年金・障害年金の受給資格を得られる
- 老後までに貯める必要のある金額が減るため、精神的負担が少ない
上記のポイントを理解しておくと、年金制度の必要性のほか、制度を有効活用できる知識も身につきますので、きちんと把握しておきましょう。
①繰り下げ受給で最大84%増の金額を受け取れる
厚生年金は通常、65歳からの受給となっています。しかし、受給開始を1ヵ月繰り下げることで0.7%の増額が可能です。増額できる割合は最大で84%までとなっています。なお、厚生年金を早期に受け取る形を取った場合は、1ヵ月につき0.7%減額された金額が受給となりますので覚えておきましょう。
老後の資産に余裕のある人は繰り下げ受給をすることで、さらに多くの厚生年金を受け取れます。繰り下げ受給の仕組みを事前に知っておくと毎月の受給額を増やせるので、有効活用しましょう。
仮に前述した厚生年金の平均額である月額14万6,145円を84%増にできれば、月26万8,906円が受取可能です。
ただし、84%増の金額を受け取るには10年の繰り下げ受給が必要となります。無理に繰り下げるのではなく、ライフスタイルや資産額に応じて柔軟に決めましょう。
②遺族年金・障害年金の受給資格を得られる
年金は65歳以降の厚生年金のみだと思っている人も多いでしょう。しかし、年金保険料を支払っておくと他にも遺族年金と障害年金の受給資格を得られます。
遺族年金は年金の被保険者であった人が亡くなった場合に受け取れる年金です。故人によって生計を維持していた遺族が受給資格を満たしていると受け取れます。障害年金は現役世代であっても、ケガや病気で医師の診察を受けたときに受け取れる年金です。
年金は保険に分類されるもので、民間と同じようにケガや病気、死亡の際に補償を受けられます。65歳に到達する前に万が一の事態が起きても、厚生年金に加入しておくだけで備えられる点もメリットです。
厚生年金は老後だけでなく、老後が訪れる前の生活についても一定の保障をした制度となっています。
③老後までに貯める必要のある金額が減るため、精神的負担が少ない
厚生年金に加入し続けるメリットとして、老後までに貯める必要のある金額が減るために、精神的負担が少ない点もあげられます。現在は「人生100年時代」のキャッチコピーが使われることも多く、老後の期間が長くなる傾向です。
老後期間が長いと、それだけ必要な生活費が増えます。高齢者の中には退職年齢を迎えても働き続ける人もいますが、体力が衰えつつあるなかでの労働や貯蓄は、精神的にも重い負担になりやすいです。
厚生年金に長く加入しておけば、それだけ多くの老齢年金が一生涯にわたって支給されるので、必要な資産を少なく見積もることができます。老後に備えた貯金を意識するあまり、生活面において過度の我慢をしている方にとっては嬉しいポイントでしょう。
まとめ
ここまで厚生年金の支給額について、計算方法やシミュレーション、重要なポイントを解説しました。
厚生年金の保険料支払を負担に感じる人もいますが、加入しておくことで病気やケガなどさまざまなリスクに備えられます。
将来の年金制度がどうなるかわからないリスクはありますが、遺族年金や障害年金の受給資格を得られることなども踏まえると、生活を支える重要な制度です。それでも、厚生年金だけでは不十分だと感じた人は、確定拠出年金などへの加入も検討してみてください。