出産を機に受け取れるお金や戻ってくるお金があることをご存じですか?これらを利用するには、各都道府県市区町村で決められた手当・一時金・補助金について正しく理解することが大切です。
たとえば2022年10月14日に報じられた「TBS NEWS」によると、出産費用は平均で45万4千円といわれており、出産時には約50万円ほどのお金を用意する必要があると考えられます。
そんなとき、国民健康保険(社会保険を含む)に加入していれば、42万円(2022年10月現在)の出産育児一時金が受けられます。この記事では出産育児一時金を含め、出産時にもらえるお金・戻ってくるお金についてご紹介します。
出産から育児休業に関するマネーリテラシー(お金の知識や判断力)を今から身につけておきましょう。
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帝王切開や切迫早産で入院・手術が必要!高額療養費制度を活用しよう
日本には、妊娠が判明し、赤ちゃんが順調に育っているのが確認できた時点で受けられる制度があります。それが高額療養費制度です。出産までの間に手続きすると受けられる制度で、病院での支払いが何らかの事情で高額になってしまった場合に、限度額以上の費用が免除されるものです。
妊娠・出産は不測の事態が起こる可能性があります。切迫早産で入院した場合や早期出産、帝王切開などです。これらの不測の事態に合わせて利用できる高額療養費制度は、加入中の健康保険の種類と収入によって免除となる限度額が異なります。
一般的な計算式は次の通りです。
収入 | 加入健康保険 | 限度額 |
1,160万円以上 | 健保:標準報酬月額83万円以上
国保:賦課基準額 901万円超 |
*252,600円+(総医療費-842,000円)×1%(多数回該当140,100円) |
770~1,160万円 | 健保:標準報酬月額53万円~79万円以上
国保:賦課基準額600万~901万以上 |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%(多数回該当93,000円) |
370~770万円 | 健保:標準報酬月額28万円~50万円
国保:賦課基準額201万円~600万円 |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%(多数回該当44,400円) |
~370万円 | 健保:標準報酬月額26万円以下
国保:210万円以下 |
57,600円
(多数回該当44,400円) |
住民税非課税世帯 | 35,400円(多数回該当24,600円) |
・全国健康保険協会(協会けんぽ)の数値を元に算出
分かりづらい計算式なので式を覚える必要はありませんが、だいたいそのくらいなのだな、と限度額のイメージを持っておいてください。高額療養費制度の詳しい計算式を把握し、いざというときのための知識として蓄えておきましょう。
高額療養費制度はあらかじめ申請しておこう
高額療養費制度は、申請が必要な保健組合と必要でない組合があります。高額療養費制度の適用には、実際に医療費が発生した後、領収書などをそろえて保険者(協会けんぽなどを含む健康保険運営者)に申請する必要があります。保険者への申請から振込までの目安は3か月ほどです。
返ってくるとわかっている出費でも、振込があるまではママもパパも不安が大きいもの。医療費が発生した時点で申請してもよいですが、あらかじめ申請しておくことも可能です。退院後の体調などを考慮して事前申請できるのも、うれしいポイントといえるでしょう。
事前申請した場合は「限度額適用認定証」が発行されます。医療機関にかかる際に「限度額適用認定証」の提示をすると、事前申請した事実確認ができる仕組みです。
妊娠判明後の書類手続きは「限度額適用認定証」をもらうまでがセット、と押さえておきましょう。
出産育児一時金はどれくらい?出産・育児休業でもらえるお金
出産にともなって受け取れる一時金・給付金は次の通りです。
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 育児休業給付金
出産育児一時金とは、子どもが生まれた際に一律42万円が支給される制度です。
支給方法は2つあるので確認しましょう。
- 直接支払制度
- 受取代理制度
直接支払制度は、健康保険組合から医療機関へ直接42万円が支給される制度で、差額がある場合は返金されます。
受取代理制度は、直接支払制度を受ける際、事務的負担が医療機関にとって大きい場合に医療機関が受取人に代わって一時金を受け取る制度です。
受取代理制度について医療機関から説明がなかった場合は、病院に問い合わせましょう。病院によっては受取代理制度に対応していない場合があります。受取代理制度が利用できない場合は、もう一方の直接支払制度の手続きを行いましょう。
出産手当金とは 申請方法や受け取り方を解説
産前休暇・産後休暇中に支給される手当金として「出産手当金」があります。
支給額は以下の通りです。
産前休暇は子の出産予定日の42日前(多胎児の場合98日)、産後休暇は出産後56日までの範囲で取得できます。産前休暇に関しては、出産予定日が基準日になるため、予定日より早く生まれた場合と遅く生まれた場合では、支給額に若干の差があることを認識しておきましょう。
出産手当金は勤め先の保健組合に申請します。会社側に産前・産後休暇の取得を申し出た場合は、人事部や総務課から書類一式が渡されるケースが多いです。
書類には必ず目を通し、必要な手続きは済ませておきましょう。医師または助産師から出産証明をもらうので、入院グッズと合わせて書類もしまっておくと安心です。
なお、退職日まで1年以上雇用されており、出産手当金の支給を受ける資格がある方の場合は、退職しても支給されます。
育児休業給付金はいつもらえるの?出産までに貯蓄は必要?
育児休業給付金は次の条件を満たしている場合に、出産手当金の支給期間が終了してから支給されます。
- 育児休業開始日前2年間に、11日以上働いた月数が12ヵ月以上あること
- 育児休業期間中の1ヵ月ごとに、休業開始前の1ヵ月あたりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
- 就業日数が支給単位期間(1ヵ月ごとの期間)ごとに10日(10日を超える場合は就業時間が80時間)以下であること
- 有期雇用契約の場合は、同じ事業主のもとで1年以上継続して働いており、かつ、子が1歳6ヵ月に達する日までにその労働契約が満了することが明らかでないこと
引用:太陽生命ダイレクト 育休手当っていつからいつまでもらえる?
入社・転職してすぐの方や、パートタイムで働く方で妊娠の予定がある場合は、支給対象かどうかを上長に確認すると安心です。
具体的な支給額については次の方法で計算されます。
育児休業給付金は2か月分まとめての支給です。
つわりや体調不良で欠勤が多かった場合は、支給額が減少します。また、支給条件に11日以上働いた月数とある通り、欠勤が続き11日以下の稼働となってしまった月は計算に含まれません。
注意するべきポイントは2つあります。
- 育児休業給付金は休業が証明されてからの支給になるので、支給開始日から4か月ほど遅れての支給となる
- 給与の67%がもらえるのは産後6か月までで、その後は50%になる
育児休業給付金も給与満額ではないため、出産に備えて貯金しておくと安心です。
【2022年10月導入】分割育休・産後パパ育休はどのような制度?
2022年10月に分割育休・産後パパ育休の制度が施行されました。「なんとなく知っているけれどよくわからない」「利用は検討していない」といった方も多いのではないでしょうか?
子育てには体力や精神力が必要であり、そんなときこそパパの育児参加が心強いものとなります。この機会に制度を学び、上手に活用しましょう。
分割育休・産後パパ育休の活用方法
分割育休や産後パパ育休は今までの制度と大きく異なります。ポイントは3つです。
- 産後育休の申し出が産前2週間前までに短縮(以前は4週間前)
- 産後育休を申請する際にまとめて申請すると2回まで分割可能(以前は分割不可)
- 労使協定を雇用元が結んでいる場合、休業中の就労が可(以前は不可)
父親の育児休暇取得が推進されていながら取得率が上がらないのは、父親が休業した結果、残された職場の人員にかかる負担が大きいのが1つの要因です。
また、4週間前に申し出が必要だった場合、トラブルにつながることも少なくありませんでした。たとえば「緊急帝王切開が必要になり、予定日よりも1ヶ月出産が早まった」といった場合です。このような状況であっても、4週間という規定により、育児休暇の取得タイミングにズレが起きることも少なくなかったのです。
従来の4週間から2週間に変更されたことで、出産前後のトラブルにも備えやすくなったと考えられます。
ほかにも、分割して育児休暇を取得できるようにもなりました。まとめて育児休暇を申請すれば、2回の分割使用が可能です。分割をうまく利用すれば、職場・家庭の負担も少なく済み、双方に合わせて柔軟な対応ができます。
育児休暇については職場の理解が欠かせません。取得しやすい環境に整えてもらうためにも、今回の制度改正は大きな進歩ともいえるでしょう。
まとめ | 出産・育児に関わる制度は積極的に学んで活用しよう
出産・育児にかかわる制度は、積極的に調べることが大切です。妊娠や出産、育児など、家族が増えることになったときは、お住まいの市区町村で受けられる制度・一時金はないかを調べてみましょう。
ただし、制度は改正を繰り返すので、数年前と変わっていることも珍しくありません。新しく正しい情報を知るには、お住まいの市区役所ホームページをチェックするとよいでしょう。
出産・育児に関わる制度はママやパパを助けてくれる制度です。積極的に調べ、上手に活用していきましょう。