確定申告って何?どうしてやるの?しなきゃいけない時と、すると得な時

毎冬流れる「確定申告の開始」のニュース。多くの方が申告会場に行って手続きしている光景を見たことがある方は多いでしょう。

 

中には「実際何をしているのかわからない」「なぜ手続きが必要なのか」「必ずしないといけないのか」と疑問が浮かぶ方もいるのではないでしょうか。

 

今回は、確定申告とは何かを解説します。申告を行う理由・申告が必要なとき・申告するとお得なときを紹介します。今冬初めて確定申告を行う方は、ぜひ参考にしてください。

 

確定申告とは何か?

 

3月いっぱいでWeb系の会社を退職し、4月からフリーランスのデザイナーになったあいりさん。この冬、独立後初めての確定申告を迎えようとしています。

 

あいりさんは確定申告について何も知らなかったため、高校の後輩で現在FPとして活躍する江川さんを頼りました。

 

あいりさんのプロフィール

年収 350万円
家族構成 夫・自身の2人暮らし
持ち家 なし(賃貸)
来春に家を建てる予定
その他 前職の時からiDeCoを始めている

 

皆さんもあいりさんと一緒に、確定申告を一から学びましょう。

 

確定申告の概要と理由

江川
まずは確定申告とは何かを簡単に説明しますね。
あいり
うん、お願いします
江川
確定申告は、3つの手順からなる手続きです。初めに1月1日から12月31日の1年間の収入から事業を運営するために使った経費を引いた”所得”に対する税額を算出して、次にそれを税務署に申告します。最後に申告した所得税額を国に納めて終わりです
あいり
なんか複雑だね……
江川
申告の期間は毎年決まっていて、例年2月16日から3月15日までです。まれに期限が変更になる場合もあるようなので、期限の確認はしておきましょう
あいり
期間が決められているんだね〜
江川
そうなんです。所得税を納めるのもこの期間内なので、忘れずに行ってくださいね
あいり
ところで、確定申告ってどうしてする必要があるの?
江川
簡単に言うと所得税を納めるためですね。申告納税方式といって、現在日本で所得税を納めるには、納税者自身が税務署に所得を申告する必要があります。なので、事業主の方などは皆さん確定申告をされているんですよ
あいり
なるほどね。思ってたより大変そうだな……
江川
最初は皆さんそうおっしゃいます。でもしっかり理解すれば必ずできるようになりますよ!

 

確定申告は2種類の方法がある

江川
確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります
あいり
それぞれどんな違いがあるの?
江川
こちらにまとめたので、ご覧ください。

 

青色申告 白色申告
共通点 必須事項
  • 確定申告書B書類の作成
  • 帳簿の作成・保存
異なる点 メリット・デメリット
  • 3種類の特別控除あり
    (10万円・55万円・65万円)
  • 赤字を3年間繰り越せる
  • 手続きは煩雑
  • 特別控除はない
  • 手続きは容易
保存する帳簿の量 多い 少ない
記帳の方法 55万円または65万円の控除を受ける場合:複式(難しい)
10万円の控除を受ける場合:単式(易しい)
単式(易しい)
税務署に別途提出する書類 開業届・青色申告承認申請書(3月15日まで。または事業開始日) なし

 

あいり
こんなに違うんだね……今の私にはどっちが向いているのかな。
江川
かつては年収300万円以下であれば記帳が義務付けられていなかったため、300万円以下の方には白色申告を勧めていました。ただ法改正で記帳が義務付けられたため、白色申告を選ぶメリットはあまりないかもしれません
あいり
青色申告の方がメリットが多そうだな〜。でも初めてだから準備する書類の多さや記帳の仕方に不安が……
江川
あいりさんは今冬初めて確定申告を行いますし、青色申告の10万円控除はどうでしょう?こちらだと申告の仕方は白色申告とほぼ同じですし、控除も受けられてお得ですよ
あいり
確かに!これなら簡単に節税できそう
江川
どうしても難しくてできない、と言う場合は、確定申告用のソフトを導入したり税理士さんに依頼したりするのも一つの手ですよ

 

確定申告をしなければならないのはどんなとき?

 

江川
確定申告が必要になる条件はさまざまですが、特に該当になりやすいパターンを3つ紹介します。

 

給料以外で20万円以上の所得があるとき

江川
1つ目は、給料以外で20万円以上の所得があるときです。
あいり
これは、副業とかも該当するのかな?
江川
そうですね。副業での利益が20万円以上ある場合は、申告が必要です。
あいり
私の友達も副業している人がいるんだけど、そういう理由で申告してたんだ。
江川
家業の手伝いや投資で得た利益も該当しますよ。投資についてはこの後詳しく説明しますね。
あいり
よろしくお願いします
江川
それから、複数の箇所で働いている方もこれに該当します
あいり
何か所で働いていても、給料以外に20万円以上の所得が発生したら確定申告が必要なんだね
江川
複数箇所で勤務している方には、年末調整されなかった分も所得とみなされるので注意が必要です

 

株式などの投資をしているとき

江川
株式や投資信託など、投資をしている場合も確定申告は必要になります。
あいり
え!そうなんだ!今年から始めようと思ってたから聞いといてよかったよ〜
江川
証券会社から送られてくる特定口座年間取引報告書を利用するので、届いたら大切に保管しておいてくださいね
あいり
ちなみに証券会社が代わりに申告してくれるって聞いたけど本当?
江川
はい。投資に関する申告は「特定口座(源泉徴収あり)」を選んで口座開設すれば、証券会社が確定申告をしてくれます。
あいり
そうなんだ、助かるね〜

 

収入額が一定の額を超えたとき

江川
会社員や公務員は原則確定申告は不要です。しかし、収入2,000万円を超えると、会社員や公務員の方でも申告をする必要があります
あいり
収入額によって定めがあるんだね〜
江川
そうなんです。パート・アルバイトの方は収入103万円を超えたら申告が必要です
あいり
一時期パートをしていた私の母がしきりに”103万を超えると〜”と言っていたのはそういう理由だったんだね
江川
おそらくそうでしょう。パート・アルバイトでかなり稼がれている方は、ご自身の収入額を明確にしておく必要がありますね

 

そのほかのパターン

江川
そのほかのパターンにはこういったものがあります

 

  • 家族経営の会社で、給料以外のお金を受け取ったとき
  • 収入が年金のみの場合、48万円控除されても残額があるとき
  • 災害により所得税の軽減を受けているとき

 

あいり
この辺りは、もし該当したら忘れずに申告しないとね
江川
そうなんです。年金暮らしが始まったら特に注意してくださいね

 

確定申告をした方がよいケースとは?

 

江川
以下のように、確定申告をした方がお得なケースもあるんです

 

  • 特定の控除を受けるケース
  • 還付を受けられるケース

 

江川
一緒に確認していきましょう

 

特定の控除を受けるケース

江川
税の控除を受けるためには、確定申告が必須のものがいくつかあります。次のような控除を受けたい場合は、忘れずに申告をしましょう。

 

  • 医療費控除(医療費が10万円以上の場合)
  • 寄附金控除(ふるさと納税など)
  • 住宅ローン控除(新築住宅の建築によるローン組みをした場合)

 

あいり
ふるさと納税は知っているよ!前はワンストップ特例制度を使ったから申告不要だったけど、確定申告をする人の場合はその制度が使えないって聞いたよ……。これからは控除の申請が必要になるんだね
江川
そうですね。寄附した自治体から送られてくる書類を大切に保管しておきましょうね。
あいり
そのほかにも確定申告が必要な控除があるんだね〜
江川
医療費控除は、医療費が10万円を超えた場合に受けられる控除です。長期入院や急病で通院した年は控除できる可能性があります。また、住宅ローン控除は家を建てた翌年1年間のみの控除ですので、該当となる年に忘れずに申告しておきましょう。
あいり
春には家を建てる予定だから、完成した次の年は忘れずに控除しておかないと
あいり
ちなみにiDeCoの掛金や生命保険料はどうなるの?
江川
会社員や公務員の方は、そうした控除を年末調整で対応するため、確定申告をする必要はありません。しかし、あいりさんのように個人事業主の方は、確定申告で控除を受ける形になりますよ。iDeCoは小規模企業共済等掛金控除、生命保険料は生命保険料控除で問題ありません
あいり
忘れないようにしておくよ、ありがとう

 

還付を受けられるケース

江川
以下のケースは、払っていた税金が戻ってくる場合があるので、確定申告をしておくとよいかもしれませんね。

 

  • 事業が赤字のとき
  • 年の途中で退職し、個人事業主・フリーランスになった場合
  • アルバイト先で源泉徴収されている場合

 

あいり
どうしてこれらのケースの場合は申告しておいた方がよいの?
江川
まず赤字の場合ですが、還付と言って払い過ぎた税金が戻ってくる場合があります。青色申告であればマイナス分を3年間繰り越せますし、過去の黒字と相殺もできます。このように損失を補填できるため税金を払い過ぎている場合に、戻ってくる場合があるのです。
あいり
そうなんだ〜、これは嬉しい点だね
江川
続いて年途中で退職した場合ですが、勤めていた会社が年末調整を行わなくなるので自身で確定申告を行います。この時にしっかりと申告をしておけば、還付を受けられる場合があるんです
あいり
まさに今の私のケースだね、ますます申告の理由が明確になったよ
江川
アルバイト先で源泉徴収されている場合も同様ですね。過度な期待は禁物ですが、お金が戻ってくる可能性があるのは嬉しい点ですよね
あいり
事業を行う立場としては、とてもありがたいね

 

まとめ

江川
では、確定申告に関する説明はこれで終わりです。また疑問が生じたらいつでも来てください
あいり
ありがとう、助かったよ

 

あいりさんは、江川さんの話を聞いて確定申告への漠然とした不安が消えたようで、申告ソフトを使って無事に初めての確定申告を終えられたそうです。

 

確定申告は、私たちが税金を納めるために行う手続きです。節税・還付などお得な面も多いため、上手に活用しましょう。

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