【家電のプロにきく】冬到来!暖房器具を賢く使った快適な部屋づくりのススメ

本格的な寒さが身体にこたえる季節となりましたね。一方で最近は電気代の高騰も騒がれており、部屋の暖かさと節電・節約とのバランスで悩まれている方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、東京電力エナジーパートナー株式会社勤務の電気のプロでありながら、多くのメディアでも引っぱりだこの家電のプロでもある、”家電王”こと中村剛さんにマネのば編集部がインタビュー!賢く快適な部屋づくりのポイントを押さえて、冬場を乗り切りましょう!

 

冬場の快適生活の3つのポイント

 

編集部
中村さん、本日はよろしくお願いいたします!毎日のように部屋の寒さと電気代とを天秤にかけていて・・お話を聞けるのを心待ちにしていました!
中村さん
よろしくお願いします。早速ですが、冬場の快適なお部屋対策と聞いて、皆さんはまず何をしますか?
編集部
えっと・・エアコンを付けたり足元のヒーターを付けたり・・
中村さん
そうですよね。とにかく暖かくしたいからと「温度」だけに目を向けがちだと思います。でも実は、快適な部屋づくりのためには温度以外にも気を付けるポイントがあるんですよ。まずはそこからお話しましょう。

 

「温度」+「加湿」+「換気・防カビ」の3点をおさえることが重要

中村さん
快適な部屋づくりに欠かせないのが、次の3点です。「温度」、「加湿」、そして「換気(防カビ)」。これらが揃っていないと、根本の問題は解決しません。
編集部
なるほど・・!確かに、冬場は乾燥も気になりますし、窓の結露なんかも起こりますよね。
中村さん
暖房器具を使って部屋の温度をあげてばかりだと、部屋が乾燥して風邪をひきやすくなりますし、寒いからと言って部屋の換気を怠ると、CO2濃度もあがりますし、カビが生えることにもつながります。一般的なエアコンは室内の空気を吸い込んで、温めた風をまた室内に放出しますから、カビのいる部屋の空気を温めてそれを吸って、となると・・
編集部
・・すごく身体に悪い気がします。
中村さん
ですよね。なので、3点をバランスよく保つことが、結果的には健康維持にもつながりますし、更に長い目で見れば、風邪をひいたり体調を崩すリスクも抑えられるので、病院や薬などのコスト抑制にもつながる可能性があります。

 

「機能一体型」よりは「機能特化型」の機器を揃えよう

編集部
「温度」「加湿」「換気」が密接に関連していて大事だということがよくわかりました。全てを叶えてくれる魔法の機器はないものでしょうか。
中村さん
最近では、例えば加湿機能が一体になった空気清浄機やエアコンなど、いろいろな選択肢があります。ただ、機器を買うなら一体型のものよりも機能別にそろえて利用するのをおススメすることが多いです。(設置スペースの問題など、個別の状況により判断が変わることもあります)
編集部
何か理由があるのでしょうか?
中村さん
加湿と空気清浄のハイブリッドタイプだと、メンテナンス等が複雑になりがちです。そして季節によって必要なタイミングが違うので、加湿と空気清浄、その目的別に分けた方が製品の性能を維持しやすいのです。また、エアコンにも加湿機能付きがありますが、大気中から水分を取るので、水タンクがある製品に比べると概して加湿能力は下がります。設置場所を取らない等のメリットもありますので、バランスを考慮しての選択が重要です。

 

家電王直伝!暖房器具の選び方・使い方ガイダンス

 

この冬活用すべきは“エアコン”

編集部
「温度」「加湿」「換気」それぞれの機器の選び方や使い方のポイントが知りたいです!
中村さん
まずは皆さんが1番気になっている温度からお話しましょう。暖房器具といっても、エアコンやヒーター、石油ストーブなど様々ありますが、1番のおススメは”エアコン”です。
中村さん
少し専門的な話になりますが、エアコンはヒートポンプという技術を使って、室外機が大気中から熱をかき集めます。その時に使う電気エネルギーよりも大きな熱エネルギーを室内に発生させる仕組みです。ヒートポンプは、効率的なのでCO2削減にもつながる”省エネ”技術なんですよ。ですので、暖房機器の中ではエアコンが光熱費も抑えられておススメ、ということになりますね。
編集部
こたつや床暖、ヒーターを使うよりもエネルギー効率が良いんですね。
中村さん
はい、部屋全体を暖める場合はそのとおりです。(ただし、床暖房にはヒートポンプ式もあります。)こたつやヒーターは局所的に使うのがおススメですね。

 

エアコンは「自動運転」が効率的かつ省エネ

編集部
ところで、エアコンと言えば、世の中の皆さんが抱えるお悩みの1つが、「こまめに消した方が良いの?つけっぱなしが良いの?」という点だと思うんです。特に、ちょっと近くのコンビニに買い物に行くときなんかは、消した方が電気代の節約になるのかどうか、いつも悩みます。
中村さん
正確に答えると、部屋の気密性・断熱性によって異なるのですが、30分以内の外出であれば「つけっぱなし」でも良いとメーカーの実証試験等で目安を示しています。また、最新のエアコンでは、「つけっぱなし」有無の差をアプリで判定するものもあります。エアコンが部屋の気密性・断熱性を学習するんです。
蛇足ですが、エアコンはセンサーが進化している上にAI等も搭載されているので、自動運転モードにするのがおススメです。
編集部
そうなんですね!たしかにエアコンのリモコンには「自動」ボタンがついていますね。でも手動で風速を強くしたり、温度設定を頻繁に変えたりしていました。
中村さん
最近では、クラウドで天気予測の情報を把握して、事前に先回り運転する製品まであるんですよ。自動運転モードで更に「-1℃」の温度設定にすれば、節電効果はあがりますね。

 

エアコンを買う際の見極めポイント 注目は“APF”

編集部
最近のエアコンは様々な機能があると思うのですが、この先買うとしたら特に知っておいた方が良いポイントはありますか?
中村さん
賃貸の場合には自分で付け替えるのは難しいかもしれませんが、購入する際には、ぜひ覚えていただきたいのは”APF”という数値です。APFはAnnual Performance Factorの略で、「通年エネルギー消費効率」を指しています。簡単に言うと、この数値が高いほど効率が良いので、結果として春、夏、秋、冬を通してコスパが良い、ということなんです。
編集部
なるほど!エアコンによってもAPFって結構異なるものなのでしょうか?
中村さん
異なりますよ。たいてい最上位クラス、中位クラス、低位クラスのラインナップがあります。価格の違いはAPFの違いと言っても過言ではありません。最上位クラスはAPFが高いだけでなく、様々な付加機能がついています。
どの商品も、カタログやパンフレットには必ずAPFの数値や付加機能が掲載されているので、家電量販店に行ったら必ずチェックしてくださいね。
編集部
ちょうど実家でエアコンを買い替える話がでているので、親に教えてAPFを確認させようと思います!

 

加湿器の選び方ガイダンス

 

そもそも加湿ってどんな仕組み?なぜ必要?

中村さん
次に湿度(相対湿度)についてお話しましょう。冬は室内が乾燥しやすくなります。外気温が低いため、そもそも空気に含まれている水蒸気量が少ないのです。その外気を換気や隙間から室内に取り込んでから、エアコン等の暖房製品で室温を上げるので相対湿度が下がってしまうのです。
編集部
理科の授業で習ったかな? 冬になったら、仕組みを深く考えずに、ただ加湿しなきゃ!と思っていた気がします。
中村さん
無邪気に加湿すると、窓際等の温度が低い場所では結露につながってしまうので、湿度(相対湿度)をコントロール出来る加湿器が必要なのです。適切な加湿をすることで鼻の粘膜の保護にもつながりますし、のどやお肌の保湿にもつながるので、健康と美容のどちらにもメリットしかないですね。

 

加湿器の種類とメリット・デメリット

中村さん
一般的に出回っている加湿器は、大きく4種類に分けられます。1つずつ特徴をお話していきますね。
中村さん
まず1つ目が沸騰式。スチーム式とも言いますね。これは分かりやすく言うとやかんで水を沸かして蒸気を出すのと同じ仕組みで、最もシンプルですし、効果のある仕組みです。
編集部
冬に石油ストーブの上でやかんをかけるのを、祖母の家でよくやっていました!
中村さん
沸騰式の加湿器は効果は高いんですが、熱い蒸気が出るので、小さいお子さんやペットのいるご家庭で使用するときには、やけどしないよう要注意です。
中村さん
2つ目は超音波式。これは超音波の振動を使って、水を水蒸気に変えて放出する仕組みです。手ごろなものも多く、見た目にもオシャレなので若い方にも人気なのですが、加湿効果は比較すると最も低いと思ってください。
編集部
え、そうなんですか!蒸気が出ているのが目に見えるので、加湿された気になっていました・・。
中村さん
蒸気の粒が目に見えるということは、蒸気が空気に溶け込んでおらずただ部屋に水をまいているのに近いということなので、部屋全体の乾燥対策にはあまりならないんです。そして、メンテナンスをしないと機器の中が汚れやすいので注意しましょう。
中村さん
3つ目は気化式です。気化式は、濡れたフィルターに風をあてることで気化させる仕組みです。大型の製品も多くでているので、戸建て住まいの方や広い部屋でも使用されることが多いですね。また、最も電力消費量が少ないので、電気代をおさえたい人には気化式がおススメです。
編集部
そうなんですね!長い目で見ると気化式が良いのかも。
中村さん
ただし、気化式は加湿されるまでに時間がかかるのと、風を送る分、音の大きな商品も多いのでその点は留意しましょう。また、こちらも汚れないようにメンテナンスが必要ですよ。
中村さん
最後はハイブリッドタイプ。気化式と温風気化式を組み合わせています。気化式の弱点をカバーして急速に加湿できます(温風気化式)。同じくメンテナンスをしっかり行う必要があります。

 

最新型は、メンテナンスが楽な交換式!

編集部
全体的に、加湿器はメンテナンスが大切という印象を受けました。
中村さん
そうですね。ただ最近では、メンテナンスが楽な交換式というタイプが新たにでています。機器に内蔵されたトレイの上に設置したカバーをまるごと交換するだけで、トレイを洗う手間がいらないということで人気があります。
編集部
加湿器の水の処理って毎日やることですし、トレイの隅っこの汚れやカビを洗うのは小さなストレスが蓄積しそうですね。
中村さん
メンテナンスが面倒という理由で加湿器を使っていなかった方にも無理なく性能維持できると好評なので、初めて買う方はぜひ検討してみてくださいね。

 

冬場の健康の落とし穴!「換気・防カビ」対策のポイント

 

そもそもカビってどうして発生するの?

中村さん
最後に換気についてお話しましょう。換気を行うことは防カビに繋がるので、換気・防カビと覚えるのが良いですね。
編集部
そもそも、カビはどうして発生するのでしょうか。
中村さん
冬場の部屋の中でカビが生えるのは、窓際が多いと思います。これは、結露が関係しています。結露は、室温が下がることで空気中に含むことができる水蒸気量が減ってしまうことで起こります。窓際は冷えた外気に近く、暖められた室内の温度との差分が最も発生しやすいので結露が起こりやすいんです。
中村さん
カビは、水分とホコリを組み合わせると発生します。窓のヘリにはついホコリがたまりがちですよね。結果として、窓際にカビができやすいんです。 換気を行うことは、部屋の中の余分な水分やホコリを外に出してくれる効果もあるんですよ。

 

正しい換気が防カビに!

編集部
仕組みは理解できました。でも、寒い冬に窓を開けるのって勇気がいりますね・・。
中村さん
そうですよね。でも、長時間換気する必要はないんですよ。1時間に10分ほど空気を入れ替えるのが理想とされていますが、回数を増やした方が効果が高いとされていて、例えば10分間まとめて換気をするよりも、5分間を2回行った方が効果的だとも言われています。
編集部
5分でいいなら我慢できるかも。
中村さん
1時間に10分はハードルが高いという方も、せめて1日1回は換気したいですね。暑い時期と違って、冬場は気づくと何日も窓を開けていない方が多いと思うので、小さな心がけでも差が出てきます。今日お話した中で1番おろそかになりがちなのがこの「換気」なので、暮らしの中でぜひ意識するようにしてくださいね。

 

【まとめ】ポイントを押さえて、賢く快適な部屋づくりを行おう

中村さん
たくさんお話しましたが、覚えて帰れそうでしょうか?(笑)
編集部
「温度」「加湿」「換気」ですね!それぞれの仕組みや関係が理解できました。早速、自宅でも加湿や換気対策を取りたいと思いました。
中村さん
一度覚えると毎年役に立ちますからね。仕組みを知って、賢く快適な部屋づくりを行うことで健康に繋がると思うと、その分きちんと必要な機器を揃えるのも高い買い物ではないかもしれませんよ。
編集部
家電を買う=大きな出費で大変、ではないですよね。家計の見直しをして、節約できることはしつつ、こうした必要なことにお金をかけることを考える良いきっかけになったように感じます。
編集部
おかげで、快適な冬を送ることができそうです。中村さん、本日はたくさん教えていただき、ありがとうございました!

 

東京電力エナジーパートナー(株)中村剛

2002年に『TVチャンピオン』のスーパー家電通選手権で優勝し、体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営にあたる。現在は家電王として動画『くらしのラボ』をFacebookとYouTubeで毎週配信している他、テレビ、雑誌、新聞、WEBなどのさまざまなメディアで暮らしに役立つ家電情報を発信中。
https://www.youtube.com/channel/UCGSXwlnTWgcf6wHoekOlq-Q

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