業種業界でこうも違う!?大卒初任給比較してみた

初任給とは、社会人になって初めてもらう給与のことです。これから社会人になる人は大卒初任給はどのくらいなのか気になりますよね。

 

2023年2月17日には、セガが従業員の月額平均給与を約30%アップするというニュースが話題になっています。7月1日から実施で、大卒初任給は約35%アップの30万円になるとのことです。

 

また、ユニクロも、新人の初任給を25万5千円から30万にアップするなど、大手企業が優秀な人材確保に動き出したようです。

 

今年の就活は長いコロナ禍の日々が緩和され、昨年とは違った傾向になっていくのかもしれません。

 

初任給は、学歴別ではどのくらい違うのか、業種別に見るとどこが高いのかなど本記事では実態を詳しく紹介していきます。これから就職先の企業選びを考えている人には参考になるので、ぜひ、最後まで読み進めてみてください。

 

学歴別初任給を比較

 

まずは、大卒初任給の平均を見ていきましょう。厚生労働省が発表した「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」のデータを基に、平成27年から令和元年の大卒と院生卒の初任給の平均金額を見ていきます。

 

大卒 大学院修士課程修了
平成27年 202,000円 228,500円
平成28年 203,400円 231,400円
平成29年 206,100円 233,400円
平成30年 206,700円 238,700円
令和元年 210,200円 238,900円

 

平成27年から令和元年の大卒初任給の平均は、大学院卒は10,400円、大卒は8,000円増加しています。大卒初任給は増加傾向にあると言えるでしょう。

 

また、大卒初任給と大学院卒の初任給を比較すると令和元年では、28,900円も差があります。これは、大卒者よりも2年多く学ぶ大学院生は、より専門的な知識やスキルを身につけていると判断されているからでしょう。

 

企業は、より優秀な人材確保のため、初任給アップを進める傾向にあると言えます。

 

大卒の業種別初任給を比較

 

厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」(2019年)を基に、業種別の大卒初任給を表で比較してみましょう。

 

業種 初任給の平均額
建設業 216,700円
製造業 206,600円
情報通信業 218,100円
運輸業・郵便業 201,500円
卸売業、小売業 211,000円
金融業、保険業 207,300円
学術研究、専門・技術サービス業 227,200円
宿泊業、飲食サービス業 200,800円
教育、学習支援業 209,400円
医療、福祉 206,900円
他に分類されないサービス業 205,300円

 

初任給平均額が最も高かったのは「学術研究、専門・技術サービス業」で227,200円です。また、2位の「情報通信業」は218,100円、3位の「建設業」は216,700円となっています。

 

将来的に人材の需要性の高い業種や、専門的な知識が必要とされる業種は、初任給が高いようです。

 

逆に、最も初任給平均額が低かったのは「宿泊業、飲食サービス業」で約200,800円でした。また、「運輸業、郵便業」の初任給も約201,500円となっています。

 

将来的に人員確保が難しいとされる、運輸業や郵便業の初任給が低めなのは懸念されるところです。

 

平均年収ベスト10の業界を紹介

 

この章では、「就職四季報」(東洋経済新報社)の冒頭に載っている「平均年収ベスト100」の企業の中からベスト10を紹介していきます。

 

2023年版「平均年収ベスト10」の上位10社(カッコ内は平均年齢)
順位 企業名 平均年収(カッコ内は平均年齢)
1位 キーエンス(電機・事務機器) 1,751万円(35.8歳)
2位 ヒューリック(不動産) 1,708万円(39.4歳)
3位 三菱商事(商社・卸売業) 1,678万円(42.7歳)
4位 伊藤忠商事(商社・卸売業) 1,628万円(42.0歳)
5位 三井物産(商社・卸売業) 1,483万円(42.0歳)
6位 東京建物(不動産) 1,389万円(42.6歳)
7位 住友不動産(不動産) 1,363万円(43.2歳)
8位 住友商事(商社・卸売業) 1,363万円(43.2歳)
9位 ファナック(機械) 1,314万円(40.2歳)
10位 東京エレクトロン(電子部品・機器) 1,309万円(44.3歳)

 

初任給後の給与の増え方は、企業によってさまざまです。「就職四季報」の各社ごとのページに「25、30、35歳賃金」を明示している企業もあります。

 

年齢別の給与を見ると新卒で入社した後、給与がどう増えていくのかわかりやすいでしょう。入社後の給与アップがどう進んでいくか見るのも企業選びのポイントと言えます。

 

定着率が高く新卒者が辞めない企業ランキング

 

ここまで、大卒の初任給が高い業種や、年収の高い企業を紹介してきました。しかし、高年収の企業が必ずしも良い企業という訳ではありません。

 

業務が過酷で、休みも取りづらい企業はできれば避けたいですよね。そこで、3年後の定着率100%の企業を平均年収が高い順に15位まで紹介します。

 

順位 企業名 平均年収
1位 東京建物 1,389万円(総合職)
2位 三井不動産 1,274万円
3位 川崎汽船 982万円(総合職)
4位 アドバンテスト 981万円(総合職)
5位 NTT都市開発 978万円
6位 阪急阪神ホールディングス 943万円(総合職)
7位 タクマ 902万円(総合職)
8位 加賀電子 900万円(総合職)
9位 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 875万円(総合職)
10位 東宝 850万円(総合職)
11位 ダイヘン 849万円(総合職)
12位 愛知製鋼 833万円(総合職)
13位 東映 821万円(総合職)
14位 中外炉工業 861万円(総合職)
15位 東京ドーム 811万円(総合職)

 

ランキング掲載会社を業種別で見ると、建設、化学、商社・卸売業などがランクインしていています。3年連続でこの3業種がトップ3を占めていて、定着率の高い業界と言えるでしょう。

 

定着率100%の会社15社を見て、知っている企業、聞きなれない企業もあるでしょう。

 

例えば、タクマはボイラー製造大手の会社で、ゴミ焼却炉や水処理装置も手掛けています。加賀電子は電子部品商社の大手で、受託製造(EMS)も展開している、業界では有名な企業です。

 

ダイヘンは独立系の電力機器メーカーで、自動車製造用のアーク溶接ロボットでは世界大手です。

 

「就職四季報2023年版」(総合版)では、3年後離職率を掲載しているので、定着率の高い企業の中から希望の会社を選ぶことができます。知らない会社があれば調べてみるのもいいでしょう。

 

これから伸びる業種6選

 

就職先を決める目安として、今後、将来性が期待できる企業に就職したいですよね。

 

しかし、将来、伸びしろがある業種か、業界の景気はどうかなどを見極めていく必要があるため、将来を見据えて就職先選びをするのはなかなか難しいことです。

 

「将来なくなる職業」が紹介された記事が多くありましたが、時代の流れに順応できる企業であるかも見ていく必要があります。

 

ここでは、経済産業省の生産動態統計を基に、将来性のある業種6選を厳選して紹介します。将来性が期待できる業界は以下の6つです。

 

  • IT業界
  • 電子部品や半導体業界
  • エンタメ業界
  • インターネット広告業界
  • 食料品業界
  • ドローン業界

 

これらの業界がこの先伸びるのではないかと予測される理由としては、以下の3つが考えられます。

 

  • AIに代替されにくい
  • 生活するうえで欠かせない
  • 高齢者向けのサービス

 

現在、私たちを取り巻くさまざまな商品にIT技術が活用されています。将来的には、今よりもさらにIT化が進むでしょう。そのため、IT業界は生活するうえで欠かせない業種になる可能性が高いため、将来性が期待できるでしょう。

 

半導体は、スマートフォン、デジタルカメラ、テレビ、パソコンなどさまざまな電化製品には半導体は欠かせないものとなっています。そのため、更なる開発が進むと推測される業種です。

 

エンタメ業界は、総務省の情報通信分野の現状と課題から、映画、アニメ、動画配信、ゲーム、音楽などの在宅で楽しめるコンテンツがコロナ禍で求められたことから、需要が高まっています。特にサブスクリプションの動画配信や、音楽サービス、スマホゲームなどが好調です。

 

経済産業省の特定サービス動態統計調査(2022年4月)の調査結果では、インターネット広告がテレビ広告をやや上回っていることがわかりました。このことから、今後インターネット広告が発展することが予想されます。

 

食料品業界は、生きていくうえで欠かせないもののため、業績が大きく変動することはありません。しかし、高齢化が進み、健康食品への関心が高まっています。食品開発された健康食品の需要が進むと思われます。

 

ドローン業界は、ただ映像を移すだけのものではなく、物流・医療・通信・報道・点検・災害調査・農業などさまざまな分野で活用する開発が進んでいます。そのため、今後伸びるのではないかと予想されています。

 

これから衰退が予想される業界5選

 

続いては、財務総合政策研究所の法人企業統計調査をもとに、これから先縮小が予想される業界を紹介していきます。将来、縮小が予想される業界は以下の5つです。

 

  • テレビ業界
  • 金融業界
  • 士業業界
  • 出版業界
  • 製造業界

 

家庭の娯楽と言えばテレビが中心でしたが、YouTubeやSNSが普及した現在では、テレビを見なくなった人も多いでしょう。

 

総務省の「テレビ視聴時間とネット利用時間の推移」を見ると、テレビ視聴時間は減少傾向にある一方、インターネットの利用時間は増加傾向にあります。

 

テレビ業界の大きな収入源はスポンサーからの広告費です。最近では、テレビCMの広告からWEB媒体の広告へ変える企業が増えてきています。広告費を大きな収入源としているテレビ業界は、広告費確保が苦しい状況になっていくと予想されます。

 

金融業界は、かつては人気の就職先でしたが、金融サービスとITテクノロジーが融合した「フィンテック」の普及でビッグデータやAIによって代替えできるため、人員削減が進むでしょう。そのため、求人数は以前よりも減っていくと考えられます。

 

税理士や司法書士などに代表される士業業界は、事務作業に多くの人材を採用してきました。しかし、AIで代用できる業務も多くこの先雇用が減少する恐れがあります。

 

出版業界は、すでに厳しい現状に立たされています。公益社団法人全国出版協会では、紙の出版物は2005年から16年間連続で低下していると発表しました。インターネットが普及し、本をわざわざ買わなくても情報を得ることができるため、出版業界は将来的に厳しくなっていくと予想されます。

 

製造業界は、工場の設備を自動化することですべての工程を無人で行えるよう開発を進められています。そのため、将来的に製造業界では雇用が減り、活気のない職場になりえる業界と言えるでしょう。

 

まとめ:大卒初任給だけでなく将来的に成長する企業も視野に入れる

 

大卒初任給をさまざまな角度から見てきました。これから就職活動をするにあたって、初任給の高さだけでなく時代の流れに柔軟に対応していける企業かどうかも見極めていく必要があるでしょう。

 

実際、大卒初任給は年々増加傾向になってきています。それは、専門的知識のある人材を企業が求めているからと言えます。

 

まずは、自分にどんなスキルがあるのかを見定めて、就職先の企業を絞っていきましょう。

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