住宅ローン契約時には、生命保険の一つである団信に加入するのが一般的です。多くの保障を付加できるため、現在加入中の生命保険が不要になる可能性があります。
それぞれの役割と目的や、保険を見直す際のポイントを解説します。
このページの目次
1. 住宅ローンを組む際には団信への加入が必要
住宅ローンを扱うほとんどの金融機関では、ローン契約と団信への加入がセットになっています。基礎知識や重要性を理解しておきましょう。
団信は住宅ローン専用の保険
住宅ローンを契約する時に加入を求められる保険が団信で、正式名称は『団体信用生命保険』といいます。
加入者が死亡したり重い障害を負ったりした場合に、団信から金融機関に保険金が支払われ、これによりローンの残債を完済できるのが特徴です。一般の生命保険と異なり、相続人は保険金を受け取れません。
団信の保険料は、毎月の返済額の利息分から充てられるケースが多いでしょう。気づかないうちに保険料が引かれているため、生命保険に入っている意識が低くなりがちです。
団信の加入がローン契約とセットになる理由
融資を行う金融機関は、契約者に万が一の事態が起こり返済が滞ってしまうリスクを負っています。住宅ローンの返済は何十年にもわたって行われるため、返済が完了するまでには何が起こるか分かりません。
契約者の支払いがストップしても、ローン未払い分がカバーされるように、多くの金融機関が契約者に加入を義務づけています。
団信への加入は、残された家族の経済的な負担を軽減することにもつながります。住宅ローンが残らないため、家族が安心してマイホームに住み続けられます。
加入する際には健康状態の告知が必要です。健康上の理由で加入できない場合は、団信への加入が任意である『フラット35』を検討するとよいでしょう。
2. 借入にあわせて生命保険を見直すべき理由
住宅ローンを組んで団信に入ると、それまで加入していた生命保険に無駄な部分が発生しがちです。ローン契約後に見直したいポイントを解説します。
保障内容が生命保険と重複することも
団信は、契約者の死亡や高度障害を保障する保険です。さらに、がん特約や三大疾病特約など、さまざまな特約も用意されています。
住宅ローン契約時に入るローン専用の保険とはいえ、あくまでも生命保険の一種です。特約を含め似たような内容が多いため、加入中の保険と内容が重複する可能性もあります。
ローンを組んで住宅を購入する際は、生命保険の内容を見直してみるのがおすすめです。特約をうまく組み合わせれば、生命保険に代替する備えとして活用できるでしょう。
保険料を必要以上に支払うことになる
融資を受ける以前に加入済みの保険がある場合は、団信に加入することで保険料の支払い負担が増加することもあります。内容が重複している部分をチェックし、二重になってもいいのかどうかを検討することが大切です。
3,000万円の生命保険に加入済みの状態で、3,000万円の住宅ローンを組んだ場合は、6,000万円の死亡保障を受けられることになります。
生命保険の契約時に内容をじっくりと考慮していたのであれば、団信による保障は必要ないかもしれません。無駄に保険料の負担を増やさないためにも、ローン契約のタイミングで見直すことが大事です。
団信は生命保険より割安
住宅ローンに特化した保険であることから、団信の保険料は一般的な生命保険と比較すると割安です。保険料は毎月の利息額に含まれているため、現在の保険料が利息額を上回っていれば、見直しを検討する価値があります。
無料で付帯できる特約が多い点も特徴です。それまで加入していた生命保険の保障が、団信では無料の特約として付加できる場合は、生命保険を見直すことで保険料の負担を軽減できる可能性も出てきます。
特にがんに関しては、一般の生命保険の方が割高になりがちです。がんと診断された際に返済を免除できる保障が必要であれば、団信の方がお得になる傾向があります。
3. 団信だけで十分とはいえない
住宅ローンの契約時に現在の生命保険を解約することには、さまざまなリスクもあります。団信のみの保障では十分とはいえない理由を解説します。
カバーできないリスクがある
基本保障である死亡と高度障害に加え、特約で三大・八大疾病のリスクにも備えられるのが団信です。ただし、団信の特約は保険適用の条件が設けられているため、状況によっては保険金を受け取れない可能性もあります。
長期間働けなくなった場合の保障がほとんどないのもデメリットです。病気やケガで職場からの長期離脱を余儀なくされ、収入が途絶えてしまっても、多くの場合は保険金が支払われません。
長期間働けなくなった際のリスクに備えるためには、『就業不能保険』への加入を検討する必要があるでしょう。団信ではまかないきれないリスクについて考慮するのがポイントです。
ペアローンの場合、債務が残る
夫婦それぞれの収入を合算して借入を行いたい場合は、ペアローンを活用できます。ペアローンとは、一つの住宅に対して複数人が個別にローンを組める借入方法です。
夫婦が別々のローン契約を結ぶことから、夫婦それぞれが団信へ加入できます。ただし、どちらかが死亡した場合、保険でまかなえる債務は死亡した加入者のみです。
夫にもしものことがあったとしても、妻は自分の返済分を引き続き支払う必要があります。返済に不安を感じる事情があるなら、ほかの保険でリスクに備えなければならないでしょう。
完済とともに団信の保障期間も終了
団信は住宅ローンの返済不能リスクに備えるための保険です。返済期間が終了すると同時に、保障期間も終了します。
ローン完済後の保険をまったく考えていなければ、保険未加入のまま老後を迎えることにもなりかねません。保険の見直しを検討する際に見落としがちなポイントです。
住宅ローンの借り換えを検討する場合も、保険が一旦終了する点に注意する必要があります。借り換えでは金融機関が変わるため、改めて加入し直さなければなりません。
一般的に、生命保険は年齢を重ねるごとに加入条件が厳しくなっていきます。先々のことも見据えて保険を考えておくことが大切です。
4. 生命保険見直しのポイント
住宅ローン契約時に保険の見直しを行う際は、必要保障額と団信の特約を意識するのがポイントです。それぞれについて詳しく解説します。
必要保障額を把握する
生命保険の見直しでは、万が一の際に必要な保障額をきちんと把握しておくことが重要です。適切な保障額を割り出せれば、保険料も適切な金額を選択できます。
例えば一家の大黒柱が亡くなった場合、どれくらいの保障を受けられれば生活できるのかを考えなければなりません。生活費以外に、教育資金なども含める必要があるでしょう。
子どもの年齢やライフスタイルにより、必要保障額は異なります。さまざまな角度から今後の生活をイメージし、万が一のときに不足する金額を計算しておくのがポイントです。
団信の特約と比較する
近年は団信の特約が増加しています。がん・三大疾病・八大疾病に加え、就業不能に対応する全疾病特約が選べるケースもあります。
金融機関によって特約のバリエーションはさまざまです。住宅ローンを選ぶ際に、団信の特約を重視して選ぶ人も増えています。
同じがん特約でも、内容が細かく異なるケースがほとんどです。保険料も比較しながら、どちらを選んだ方が得なのかをきちんと見極めましょう。
5. 住宅ローンを組む際には生命保険の見直しも
住宅ローンの契約時には、団信への加入を義務づけられるのが一般的です。現在の生命保険を見直すことで得をする可能性もあります。
ただし、現在の生命保険を解約し、団信だけに絞るのはハイリスクといえます。必要保障額の把握や特約との比較を意識し、適切な保障内容と保険金を実現できる保険を選択しましょう。

著者: 堀江 勇介 モゲチェック チーフアナリスト
銀行にて有価証券運用業務に従事。金融市場に関する深い知見を武器に、チーフアナリストとして活躍。金利の将来予想など、住宅ローンに関する様々な情報を発信。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。